お茶は健康にいいといわれています。本当にそうでしょうか?様々な現場を見てきた経験から、改めて日本のお茶づくりの現状を考えたいと思います。
一般的なお茶作りに、欠かせないのが肥料と農薬です。今、日本のお茶づくりの現場で使われている農薬は「ネオニコチノイド系農薬」です。ネオニコチノイド系農薬は効果が長く持続し、農薬の散布回数を減らします。一見、農作業の効率化が図られていいようにも思われますが、実はその分、農薬の含有濃度は上がるといわれています。
日本のお茶に多く含まれるネオニコチノイド系農薬。果たしてどのような農薬なのでしょう?この農薬について調べてみました。
ネオニコチノイド系農薬は、害虫には毒性が高いがヒトには安全であるとされ、世界中で使用量が急増している。ネオニコチノイドはニコチン類似構造を持ち、昆虫では神経伝達物質アセチルコリン(ACh)の受容体であるニコチン性 ACh 受容体(nAChR)に強いアゴニスト作用をもつが、哺乳類への影響は十分調べられていない。哺乳類の nAChR は自律神経、末梢神経で主要なだけでなく、中枢神経系や免疫系でも多様な作用を持ち、特に発達期の脳における重要な働きが分かってきた。最近ネオニコチノイドが哺乳類にも影響を及ぼす研究報告が出てきている。我々は、ネオニコチノイドが、発達期のラット培養神経細胞に nAChR を介して、ニコチン同様に1μM の低濃度から興奮性反応を起こすことを明らかにした。ニコチンはヒトへの毒性、特に子どもの発達への悪影響が分かってきており、ネオニコチノイドによる子どもの脳の発達への影響が懸念される。
—引用:第20回日本臨床環境医学会学術集会特集『新農薬ネオニコチノイド系農薬のヒト・哺乳類への影響』2012.
患者の生活習慣として共通する特徴に、健康維持に熱心で国産果物やお茶を積極的に摂取していることがあげられます。実は、ネオニコチノイド系農薬の残留基準は、欧米よりもかなり緩い基準値になっています。たとえば、お茶ではEUで0.1ppmなのに対して、日本ではその500倍の50ppmの基準値です。実際に、青山氏らの調査では、りんごでは4.9ppm、茶葉では10~20ppm、茶飲料では2.5ppmのネオニコチノイド系農薬が検出されています。健康にいいと思って食べていたものが実は健康被害の主因になっていたのです。
—引用:『人体被害の実態~青山内科小児科医院からの報告~』青山内科小児科医院 医師 青山 美子
日本のお茶づくりに使用されているネオニコチノイド系農薬。少し調べるだけでもこのような論文や見解が出てきました。
それでも国が認めている農薬です。実際に被害は出ているのでしょうか?
農林水産省のホームページに以下のようなデータが掲載されていました。農薬の使用に伴う事故及び被害の発生状況について、過去5ヶ年の事故及び被害の発生状況をまとめたものです。農家さんの全体数から比べたら数は少ないかもしれませんが、今も農薬による死亡事故や中毒は発生しています。
日本は、諸外国に比べると食の安全性が高いといわれています。農薬を使っていてもその量が少なければ問題ないかもしれません。調べると、こんなデータも出てきました。
比較してみると、日本の農薬使用量の多さがよくわかります。それでも農薬は害虫を防ぐためには有効な手立てです。私たちがお茶を口にするときに農薬が残っていなければ問題ないのではないでしょうか。
EUの残留農薬基準が小数点以下のものが多い中、日本は10桁代のものが多いです。成分にもよりますが、場合によってはEU基準の数千倍多くの基準量で定められていることになります。なぜ日本のお茶の残留農薬基準値は高く設定されているのでしょうか?
農林水産省『諸外国における残留濃度基準に関する情報』によると、
- 直接食べない
- 一度に使う量が少ない
- 茶葉に残っている農薬は溶けだしにくい
- お湯に溶けだす農薬は10%ほど
これらの理由で残留農薬基準値を高く設定しても問題ないと判断されているようです。本当にそれでいいのでしょうか?
日本のお茶づくりの現状を調べていくと様々な情報が出てきます。これらの状況が見えてきたとき、私には日本のお茶づくりの現場が以下の事態に陥っているのではないかと感じました。
- 農協で農薬と肥料をセットで売っているから買わざるを得ない状態
- 農薬を使わないと農協基準に合わなくて卸せない(売れない)
- 昔から農薬を使うのが当たり前だったから、使わないと他の農家(派閥)にいじめられる
肥料を使えば、同じ面積と手間で終了が増えて儲かる。農薬を使えば、お茶を害虫から守ることができ、人が刺されることもない。自然は汚染され、こうして作られたお茶がJAからスーパーを通じてお客さんのもとへと届くのです。
お茶農家は有害な農薬をばら撒き、消費者は口から毒を体内に取り込む…。一体誰が得する関係なのでしょうか?
「少しでも安く買いたい」
消費者からは常にこういった声が上がります。安く作るためには大量生産が必要です。大量生産するには肥料と農薬は必須、さらにコストダウンを図るために低賃金で働かせることのできる農業実習生や障碍者に仕事を頼むところもあります。何かを犠牲にすれば、お金をかけず大量生産を生み出すことができます。それは時に企業努力として評価されることもあります。
顧客ニーズが多様化する中で、様々な価格帯の商品が生み出されることは間違ってはいません。ただしそれにより、何か大切なものを失うこともあることを、私たちは強く認識しておく必要があるかもしれません。